吉備津神社(櫻山城跡)は、広島県福山市に鎮座する備後国一宮の古社であり、背後の櫻山には血塗られた戦乱の歴史が眠っている。ここでは、戦で無惨に散った武士たちの怨念や、自刃した城主・櫻山四郎入道慈俊の無念が、今なお奇怪な現象を引き起こしているという。今回は、吉備津神社(櫻山城跡)にまつわるウワサの心霊話を紹介する。
吉備津神社(櫻山城跡)とは?
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吉備津神社は、広島県福山市新市町宮内に鎮座する備後国一宮であり、かつて「一宮さん(いっきゅうさん)」の愛称で親しまれた。
主祭神として大吉備津彦命を祀り、その一族を配祀する由緒ある神社である。現在の社殿は江戸時代に造営され、国の重要文化財に指定されている。
この神社の背後には、比高50mほどの櫻山と呼ばれる丘陵が広がる。
そこはかつて、櫻山城が築かれていた地である。
鎌倉時代に宮氏の一族、または櫻山四郎入道慈俊によって築城され、後に太平記に登場する「櫻山四郎入道慈俊」の本拠地として知られることとなった。
慈俊は元弘の役で後醍醐天皇に味方し、備後半国を従えるまで勢力を拡大したが、笠置山落城の報と誤報によって兵が離散、ついには吉備津神社に火を放ち自刃して果てたと伝わる。
この血塗られた歴史は、今なおこの地に深い影を落としている。
吉備津神社(櫻山城跡)の心霊現象
吉備津神社(櫻山城跡)の心霊現象は、
- 男性の霊が忽然と現れ、無言で人を見つめる
- 薄暗く湿った敷地内で突然、頭痛や肩の痛みに襲われる
- 桜山一族の無念が、冷たい風の形となってまとわりつく
- 夜中に訪れると、誰もいないはずの場所からすすり泣く声が聞こえる
である。これらの現象は、櫻山城を巡る血なまぐさい歴史と無関係ではないだろう。
以下、これらの怪異について記述する。
男性の霊
吉備津神社の裏手、櫻山城跡へと続く小道を歩くと、不意に甲冑を着たような影が現れるという。
それは男性の霊であるといわれ、通りすがりに冷たい視線を投げかけ、音もなく霧のように消える。
眼が合った者は、数日間悪夢に苛まれ、夜毎に首を絞められるような苦しみに呻くのだという。
突然の頭痛や肩の痛み
敷地内に一歩足を踏み入れた瞬間、ずしりとした重みが肩にのしかかり、鉛のような頭痛に襲われる人は少なくない。
それは、悲惨な最期を遂げた櫻山四郎入道慈俊や、無念のうちに果てた多くの武士たちの怨嗟の念が、いまだそこに渦巻いているからだとささやかれている。
桜山一族の無念
櫻山城を守った武士たちは、誤報によって離散した仲間を恨みながら散っていった。
彼らの無念は深く、死してなお鎧兜のままこの地をさまよい続けている。
風が吹くと、木々の間から呻くような声が漏れ、訪れた者の耳元で名を呼ぶのだという。
すすり泣く声
夜中、神社の鳥居付近に立つと、森の奥から女とも男ともつかぬ声がか細くすすり泣くのが聞こえてくる。
声の主を探しても、そこには誰もいない。
ただ、足元の土だけが生ぬるく湿っており、まるで誰かがそこにひざまずいて泣き崩れた後のようだと語る人もいる。
吉備津神社(櫻山城跡)の心霊体験談
ある若い夫婦が、夜の散歩がてら吉備津神社を訪れた。
鳥居をくぐった途端、妻が突然「肩が痛い」と呻き出し、その場にへたり込んでしまったという。
夫が慌てて肩に触れると、氷のように冷たく、押し返すような何かに触れた感触があったそうだ。
その夜、妻は眠りながら何度も「燃える、熱い…やめて…」とうわ言を繰り返し、翌朝、肩には火傷のように赤い手形が残っていた。
医師に見せても原因は不明であり、以来この夫婦は二度とその地を訪れていない。
吉備津神社(櫻山城跡)の心霊考察
これらの怪異は、すべて鎌倉から南北朝、室町へと続く戦乱の歴史が刻んだ怨念の残滓であろう。
櫻山四郎入道慈俊が、誤報により孤立し、自ら火を放って自刃した哀しみ。
その命を散らされた武士たちの憤怒。これらの無念が、吉備津神社と櫻山城跡一帯に纏わりつき、人の心に影を落とし続けているに違いない。
吉備津神社は長い歴史の中で崇敬を集めた神社である。
しかし、その尊厳の裏にある血塗られた記憶は、訪れる者に静かに、だが確かに爪痕を残す。
誰もいないはずの場所で感じる視線、理由なき頭痛や肩の痛みは、この地を彷徨う幾千の亡霊が、なお語りかけている証なのである。
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