熊本県に実在する石塘橋(いしどもばし)には、かつての大規模工事にまつわる「人柱伝説」や、今もなお語り継がれる霊の目撃情報など、数々の不可解な心霊話が存在するという。今回は、石塘橋にまつわるウワサの心霊話を紹介する。
石塘橋とは?

石塘橋(いしどもばし)は、肥後熊本藩初代藩主・加藤清正によって築かれた歴史ある石の堤防である。
加藤清正は広大な農地を確保するために、当時の菊池川の流れを変えることを計画。
1589年から17年の歳月をかけ、1605年に完成させたのがこの「石塘」である。
しかし、その工事は想像を絶する困難を極めた。
潮の激流により何度も堤は崩れ、投じた石や資材はことごとく流され、まるでこの地そのものが何かを拒んでいるかのようであった。
人々は古来の慣習に従い、“人柱”を用いて鎮めを試み、横島山から高僧が読経を上げる中、人を石の中に埋め込むという手段に至ったという。
工事の犠牲者と人柱に捧げられた霊たちは、現在「本田大明神」に祀られているが、それでもなお霊たちは静まることはなかったのか、この周辺では数多の怪異が今なお語られている。
石塘橋の心霊現象
石塘橋の心霊現象は、
- 誰もいないはずの橋上で足元に転がってくる小石
- 石をぶつけるような「カチカチ」という音が夜中に響く
- 橋のそばに立ち尽くす男性の霊の目撃
- 悲しげに佇む女性の霊の姿
である。以下、これらの怪異について記述する。
まず注目すべきは、「小石の怪」。
夜更けに石塘橋を一人で渡ると、足元に小石が転がってくる。
誰かのいたずらかと周囲を見渡しても、そこには誰もいない。
そして、次の瞬間には「カチ…カチ…」と、まるで誰かが石をぶつけて遊んでいるような音が背後から聞こえてくる。
その音は一定のリズムではなく、不意に、唐突に鳴り響くという。
振り返ってもそこには何もなく、ただ月明かりに照らされた石の橋があるばかり。音の主が霊であると語る者も少なくない。
さらに、橋の端に男性の霊が立っていたという証言も多い。
その霊はじっと川面を見下ろしており、声をかけるとふっと消えてしまうという。
表情は憂いに満ちており、どこか未練を残してこの世に留まっているかのようである。
また、別の夜には、着物姿の女性の霊が見えたという報告もある。
白装束ではないものの、その姿はぼんやりと光を帯び、誰にも気づかれないかのように歩き続けていたという。
人柱として堤に埋められた女性なのか、それとも事故で命を落とした誰かなのか、その正体は未だ不明である。
石塘橋の心霊体験談
地元住民の一人がこう語る。
「夜に犬の散歩で橋を渡ったときのこと。急に犬が足を止め、吠え出したんです。周りを見ても人影はない。でも、その直後、足元に“カチッ”と小石がぶつかった音がして…。慌てて帰りました。犬もずっと尻尾を丸めたままでした。」
別の若者はこう証言する。
「肝試しで夜中に石塘橋に行った時、誰もいないのに後ろから足音がついてきた。怖くなって振り返ったら、そこには誰もいなかったんだけど…川のほうに白い影が立ってた。目を凝らした瞬間、消えてた。」
石塘橋の心霊考察
石塘橋は、歴史的にも極めて重要な土木遺産である。
しかしその裏には、言い伝えによると“人柱”という重すぎる犠牲があったとされている。
肥後国誌には「仏経を納めた」と記されているのみで人柱には触れられていないが、地元に残る伝承では庄屋・伝作が自ら人柱になることを申し出たという話がある。
その日、伝作が最後に食べたという“生の団子”は、今でも毎年の供養祭でお供えされている。
果たして、本当に人柱は存在したのか。それとも多くの殉職者たちへの畏敬が物語を生み出したのか。
いずれにせよ、命を賭して完成させた堤防には、今もその無念や思念が染みついているのかもしれない。
橋の上に転がる小石。現れる霊。響く謎の音。
それらは、今なお鎮まらぬ“声なき声”が形を持ったものなのか──。
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