大分県中津市にある耶馬溪ダムには、美しい景観とは裏腹に、数々の不気味な心霊のウワサが存在する。夜中に現れる女性の霊、ダム内部や湖面に現れる老婆の姿、そして自殺者の霊の目撃情報など、訪れた者を凍りつかせるような怪異が囁かれているという。今回は、耶馬溪ダムにまつわるウワサの心霊話を紹介する。
耶馬溪ダムとは?

耶馬溪ダム(やばけいダム)は、大分県中津市の山移川に建設された重力式コンクリートダムである。
1985年に竣工し、山国川水系で唯一のダムとして、治水・利水・水力発電の役割を果たしている。
国土交通省直轄の特定多目的ダムであり、下流に位置する平成大堰とともに、中津市および福岡県北九州市・京築地域の重要な水源となっている。
高さ62メートル、総貯水容量は1,120万m³にもおよび、景観としても美しく、秋には紅葉が見事な名所でもある。
しかし、その静かな水面の奥には、恐ろしい噂が潜んでいるという――。
耶馬溪ダムの心霊現象
耶馬溪ダムの心霊現象は、
- 深夜、ダム湖近くの電話ボックスに現れる女性の霊
- ダム内部に現れる老婆の霊
- ダム湖の中を猛スピードで泳ぐ老婆の霊
- 自殺者の霊が周辺に出没するという噂
である。以下、これらの怪異について記述する。
まず最も有名なのが、ダム湖近くの電話ボックスに現れる女性の霊である。
目撃されるのは決まって夜中で、白い服を着た女がガラス越しにじっと外を見つめているという。
通報を受けて駆け付けた警察が確認するも、そこには誰もおらず、電話線にも発信履歴は残されていなかったという報告がある。
彼女は家族か恋人に連絡を取りたかったのだろうか。だが、彼女の手は受話器を持ったまま、動かないという。
次に語られるのが、ダム内部に現れる老婆の霊である。
管理用のトンネルや排水路で目撃されることが多く、誰もいないはずの薄暗い通路に、濡れた髪を垂らした老婆が立ち尽くしているという。
目が合った者は、数日後に高熱を出して倒れるとも囁かれている。
さらに不可解なのは、ダム湖を全力で泳ぐ老婆の霊の噂である。
まるで世界水泳の選手のような猛スピードで水をかき分ける老婆の姿が、夜間に確認されているという。
しかも、水面には波紋も泡も残らず、ただ黒い影だけが音もなく移動する……という証言が複数寄せられている。
そして、ダム全体に漂う不穏な空気の源とされているのが、過去にこの場所で命を絶ったとされる人々の霊である。
人知れず飛び込んだ者、遺体すら見つかっていない者もいるという。
時折、水面に誰かの手のようなものが浮かんで見えた、という目撃情報も後を絶たない。
耶馬溪ダムの心霊体験談
ある地元住民は、夜釣りに出かけた帰りに電話ボックス前で立ち止まり、不意に中を覗いたという。
そこには、髪の長い女性がこちらに背を向けて立っていた。
声をかけようとした瞬間、彼女がゆっくりと振り向き、その顔に目や口が存在しないことに気づいたという。
また別の男性は、昼間に展望所からダム湖を眺めていたところ、水面を移動する黒い影を発見。
双眼鏡で確認すると、それは水着もつけていない裸の老婆が、猛スピードでクロールしていたのだという。
怖くなり車で立ち去ろうとしたが、助手席の窓に老婆の濡れた手形が残されていたと語る。
耶馬溪ダムの心霊考察
耶馬溪ダムにまつわる心霊現象には、一貫した“水”との結びつきが見て取れる。
水辺は古来より霊的な存在が集まりやすいとされており、自殺者や事故死者の無念がそのまま濃霧のように漂っているのかもしれない。
電話ボックスに現れる女性は、現世に未練を残し、最後の連絡を求めて彷徨っている霊である可能性が高い。
老婆の霊に関しては、その特異な出現の仕方から、単なる人魂ではなく“水神”や“怨霊”としての側面すら感じさせる。
全力で泳ぐ姿は、人間の身体では不可能な速さであり、それが逆に人智を超えた存在である証左とも言える。
これらの現象は、ダムという人間の手で制御された自然の中に、抑えきれない何かが滲み出てきているように見える。
人工と自然の境界、その狭間にこそ“何か”が棲みつくのである。
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