大分県宇佐市と中津市の境界に位置する「桜隧道」は、古びたトンネルにまつわる不気味な噂が絶えない場所である。深夜に突如現れる白い霊体や、運転席の足元から這い出る無数の手など、不可解な現象が次々と語られており、地元では「夜には出る」と恐れられている。今回は、桜隧道にまつわるウワサの心霊話を紹介する。
桜隧道とは?

桜隧道(さくらずいどう)は、大分県宇佐市と中津市の境界、桜峠のサミットに位置する石煉瓦造りのトンネルである。
県道44号線(宇佐本耶馬溪線)上にあり、現在も地域住民の生活道路として利用されている。
竣工は昭和9年(1934年)3月。全長は地図上の測定でおよそ140メートル、幅員は普通乗用車が少し余裕を持って通行できる程度である。
北側の坑口が宇佐市、南側が中津市に面しており、隧道のおよそ3分の1地点が市境となっている。
近年になって補修工事が施され、コンクリートで補強された箇所や湧水を逃がすパイプが設置されているが、隧道の中央部には素掘りの内壁が残されており、夜間は深い闇に包まれて視界がほぼ失われるという。
桜隧道の心霊現象
桜隧道の心霊現象は、
- トンネル内に現れる正体不明の白い霊体
- 運転席の足元から突如現れる「無数の手」
- 白昼でも発生する、不可解な自然現象(例:落雷)
- 地元住民の間で囁かれる「夜には出る」の声
である。以下、これらの怪異について記述する。
ある者が語った恐怖体験によれば、夜中に車で桜隧道を通過中、トンネルの中央付近に差しかかったその時、突如として運転席の足元から「無数の手」が這い出てきたという。
手は霧のようにぼやけ、しかし確かに“掴まれる”感触があり、足首を強く引かれたことでパニック状態に陥ったという。
車はハンドルを大きく取られ、あと一歩で谷底に転落しかけた。
また、肝試しに訪れたという若者グループは、車のエンジンとライトを切り、トンネル内部を注視していたが、視線の先とは違う方向――隧道脇の山の中から「白い塊」がふわりふわりと浮かびながら近づいてきたという。
人とも霧ともつかない形をしたそれに全員が恐怖し、叫び声と共に車に飛び乗って逃げ出した。
別の日には、日中であるにもかかわらずバイクで通りかかった直後に、青天のはずの空から突然「落雷」が発生。
バイクのすぐ横に雷が直撃し、衝撃で転倒する事故となったという。
これらの現象は偶然や錯覚とは言い切れず、まるで「何か」が通行者に対して干渉してくるかのようである。
桜隧道の心霊体験談
若い頃、友人たちと5台の車で肝試しに出かけた。
桜隧道の手前で車を停め、全員がライトもエンジンも切って、トンネル内に何か見えないかを観察していた。
その時、誰かが小さな声で「山の中を見て」と言った。
見ると、トンネルではなく、車の横の山林から白い霧のような塊が、確かにこっちに向かってゆっくりと浮いてくる。
風はなかった。
霧でもない。
それは生き物のように、明確な意思を持って近づいてきた。
全員が一斉に車へと飛び乗り、言葉も交わせぬままその場を離れた。
後日、昼間なら安全だと思い、単独でバイクに乗って再訪したところ、快晴だった空から突如として雷鳴が轟き、バイクの横に雷が落ちた。
転倒し、身体を強く打ったが、なぜか身体のどこにも火傷や傷はなかった。
ただ、視界の隅に、またしても“白い塊”のようなものがゆらいでいた。
桜隧道の心霊考察
桜隧道にまつわる心霊現象には、「霊が道を塞ぐ」「物理的な干渉を起こす」「自然現象を操る」という、三つの異なる性質が混在している。
まず、無数の手や白い霊体の出現は、事故死した者や遭難者の“残留思念”によるものと考えられる。
特に運転席の足元から出る「手」は、死してなお出口を求め彷徨う霊が、通過車両にすがりついているのかもしれない。
次に、白い塊が山中から現れるという現象は、地縛霊あるいは自然霊の可能性が高い。
この隧道周辺は、霊が溜まりやすい地形にあるとされる“峠”に位置しており、霊的エネルギーが集積する条件が揃っている。
最後に雷の件。これは偶然とも取れるが、ピンポイントでの落雷、しかも霊的存在の目撃と重なるのは偶然にしては不自然である。
霊が何らかの形で自然の力を引き寄せている、あるいは“警告”として意図的に引き起こしているとも考えられる。
総じて、桜隧道は「ただの古いトンネル」ではなく、目に見えぬ存在が確実に潜んでいる“異界との接点”と考えるべきであろう。
コメント